[レポート]Great ScrumMaster
はじめに
こんにちは、かみとです。2021年1月6日~9日の日程で開催されたReagional Scrum Gathering Tokyo 2021の参加レポートです。
このエントリは、Day1のKey noteであるGreat ScrumMasterのレポートです。
登壇者
Zuzi Sochova
@zuzuzka
sochova.com
スライド
セッションレポート
パプアニューギニアの民族
- パプアニューギニアの言語の数は850以上
- 同じ言葉を話す人は1000人以上いない
- 同じ文化もあれば全く違う文化を持っている部分もある
Mergaret Mead
- 文化人類学者
- パプアニューギニアで研究を行った
- 部族の中での協力・競争・個人主義について研修した
- 『個人主義は文化の自殺』
- 好奇心を持って理解しようとした
組織にも同様に複数のチームがある
- それぞれ部族のように異なっている
- 言語も異なる
- マーケティング
- 営業
- ソフトウェア開発者
- それぞれが理解できていない場合があり、部族に似ている
必要なのは、好奇心、遊び心、そして理解しようとする気持ち
- まず話を聞くところから始めなければならない
- でも考えを押し付けてしまうことがある
- それで何かが変わるかというと、そういうことはない
Zuziの話
- ある日突然スクラムマスターを命じられた
- 自分はやりたくなかったので、嫌々始めた
- 3ヶ月やったら元の仕事に戻ろうと思っていた
- 2つのチームのスクラムマスターとして配属された
- チームメンバーも乗り気ではなかった
- 長年一緒に仕事をしている同僚は、「やってるフリをすれば??」とアドバイスした
- しかし、この「スクラムもどき」のほうが逆に難しかった
- 結局、本物のスクラムを始めた
- できるだけスクラムの通りにやってお客様を満足させたかった
- もう改善の必要がないくらい最高のチームになった
- こうなると、変化の必要を感じないようになった
- その後、18ヶ月たって振り返ってみて気づいた
- スクラムを続けることで改善でき、最初は乗り気ではなかったスクラムに、自分たちが助けられていた
- このプロセスの秘密をもっと知りたいと思うようになった
- アジャイルのカンファレンスに参加するようになった
- 世界中で月1度くらいのペースでカンファレンスに登壇した
- 今ではアジャイルが大好きになった
- まだ充分ではなく、終わりのないジャーニーのようなもの
スクラムマスターの目標とは?
- スクラムマスターが何もしなくても、チームが自己組織化し、チームが自分たちで問題解決できるようになること
#ScrumMasterWay - State of Mind
- そのために必要なスクラムマスターのマインドとは
Teaching, Mentoring
- 最初はチームが何をやっていいのかわからない状態
- スクラムガイド読んでもわからない
- 説明が必要で、何百回も説明する必要がある
- 例を示していくことも重要
- 過去の体験を語るなども重要
Help Remove Impediments
- Teachingで伝えられることは全て伝えたという状態になった時に、次に取り掛かるのが「障害を取り除く手助けをする」というステップ
- (例)フィードバックを待っていたんだけど、なかなか帰ってこないというケース
- 『長いあいだ待っていたんだけど、その間何をしていたのか?仕事していなかったの?』
- (こういう伝え方をすると)本当は手助けをしたいのに、信頼されていないと感じることに繋がる
- こうならないためには、サーヴァントリーダーになる必要がある
- 『長いあいだ待っていたんだけど、その間何をしていたのか?仕事していなかったの?』
- 自分自身で障害を取り除くようになっていく
- アシスタントではなく、自分事として解決していく
- リーダーとして更に成長できるようサポートしていく
- 最初はそうじゃなくても、責任のある仕事をすることで自ら変わりはじめていく
Facilitation
- 自分で問題解決ができるような状態になったときに、次のステップになるのが、「ファシリテーション」のステップ
- 実践を通してスクラムイベントのファシリテーションを行っていく
- シンプルなミーティングになるはず
- チーム内部、お客様、同僚、マネージャー、組織の他のチームとの会話になることもあるかもしれない
- 衝突により会話が止まってしまうこともあるかもしれない
- そういった問題にも自己組織化されたチームでは自分たちで対処できるようになっていく
Coaching
- コーチングの目標は意識を高めること
- 講師として教える場合、教える側が専門家でなければならない
- 知識を最大限持っている必要がある
- コーチングは「学び方」を教えるので、教える対象分野について専門家である必要はない
- 学び方のコーチングはできる
- ドイツ語を知らなくても、ドイツ語の学び方はコーチングすることができる
Observe
- 工場での例
- 「チームの動きを台の上から2時間観察してください」と言った
- 2時間後、全てのマネージャーが「素晴らしい、問題はなく完璧だった」と言った
- 「更に2時間観察してください」と言った
- 「こういう改善が必要だ」という話を始めた
- 「チームの動きを台の上から2時間観察してください」と言った
- このように「観察」には時間がかかる
- スクラムマスターがフルタイムで専任でなければならない理由はここにある
#ScrumMasterWay - Metaskills
- 規模拡大していくときに必要なこと
Curiosity(好奇心)
- 「なぜこうなっているのか」という観点を常に持つ
- レトロスペクティブなど好奇心を持って接する
Respect(尊重)
- 正しい、正しくないということはなく、いろいろな視点があるということ
- それらを尊重しなければいけない
- 見方によって異なる意見をいかに尊重できるか
- 大きなシステムで複雑であればあるほど、尊重することが大切になる
Patience(忍耐)
- いろいろな改善活動を継続していくには忍耐が必要
- 成長や改善はとても時間のかかること
Playfulness(遊び心)
- 内なるマインド
- 楽しいか、イライラしているか
- 戦略的なゲームをしているようなもの
- 試行錯誤しながらいろいろやってみる
- ヒントもプロセスもない中で自分で見つけていく
- 誰かに教えられたとしても、もちろんインスピレーションを受けることはできるが、遊び心をもって自分で試してみることが重要
#ScrumMasterWay - Learning
- 学びは無限
- コーチング、ファシリテーション、オブザベーション、メタスキル、文化人類学
- チームメンバーが学ぶ自由を持つこと
- 最初は何もわからなかったが、毎年新しいことを学んでいる
- 2つの側面
- 経験を共有する、説明するスキル
- いろいろな説明のやり方を試す必要がある
- コーチングやファシリテーションの講座を受けたことがあるスクラムマスターは10%くらい
- ソフトスキルを身につけるには、しっかりとした勉強をする必要がある
- バックログをどのように優先順位付けをするか、どのように測定するかについても知る必要がある
- こういったプラクティスも必要
- プロセスを発見する手伝いをしたり
- テクニカルプラクティスも必要
- 少なくとも知っておく必要がある
- CI/CD
- マニュアルテストをどうやって自動化するか
- 癖や習慣を変えていくのはとても大変なこと
- 変化しないことへの危機感を持つ必要がある
- 必要性がなければ変更できない
- 誰でも変わりたくないという気持ちがある
- 文化人類学者の考え方を持ち、変化の必要性を理解することが重要
- (変化しようとしても)スクラムマスターの言動に疑いをもつ可能性もある
- 言い方、熱意を持っているか、信じているか
- 最初のフォロワーが必要
- 少しずつ成功体験の積み上げをしていくことが必要
- 変化しないことへの危機感を持つ必要がある
#ScrumMasterWay - Leadership
Servant Leader
- サーヴァントとリーダーという矛盾した定義が相まった言葉
- 共感を持つ必要がある
- 誰かの癒やしになる
- 会話をサポートする
- 個人的な衝突を回避する
- すべての人が機能するようにする
- 怠け者に関してどうしたらいいか?
- 怠けているように見えるとしたら、それは環境を反映している
- 環境を変えれば振る舞いがかわる
- 怠け者に関してどうしたらいいか?
- 成長に対するコミットメント
- サポートしていく
- 傾聴する
- 認識を高めていくこと
- Self-awarenessを高めることも重要
- 説得するスキル
- 夢があるか
- 人がついてくるような話し方をしているか
- コミュニティの構築するスキル
- リーダーになるべき
- アイデアに賛同してくれる人を集めてコミュニティを構築すること
#1 ScrumMaster is a leadership role
- リーダーであり、マネージャーではない
- スクラムマスターが活動する3つのレイア
- 自分自身の開発チーム
- 開発チームにストーリーを話す
- 直属のチームに対して、ティーチング、コーチング、ファシリテーション、障壁を取り除くなどの支援
- 監査をする
- リレーションシップ
- 複数のチームにフォーカスする必要になる
- お客さま、マネージャー、他のチームなどが関わってくる
- 経験を共有する
- ツールを共有する
- プロダクトオーナーのサポートをする
- プラクティスのサポート
- 組織全体を見る
- スクラムマスターはシステムの視点から考える必要がある
- 何がバリューなのか、高台に立って全体を見る
- 「誰もが部分的に正しい」
- だからこそMetaSkillが重要になる
#2 Look at organizations from the system level
- システムの観点から全体を見る必要がある
- すべての複雑なシステムを見つめて、受け入れる
- 常により良い方法があるはず、と考える
- プラクティスを押し付けない、ヘルプする
- あまり先走りせず、チームメンバーより一歩だけ先を行く
#3 Don't push don't be hehind Be only one step ahead
- 常に一歩だけ先を行く
- スクラムマスターはマネージャーではなく、メンタルの影響力を発揮する
3つのTips(まとめ)
- スクラムマスターはサーバントリーダーとしてリーダーシップを発揮する
- システムレベルで組織全体を文化人類学者の目線で観察する
- プラクティスを押し付けず、常に人より一歩だけ先を行く
感想まとめ
SCRUM MASTER THE BOOKは私も読んでいて、社内でも読書会を開いていたり、とても身近に接していた書籍だったので、その著者の話を直に聞ける機会はとても貴重でした。
本の内容を踏襲した公演でしたが、Zuziさん自身の経験談やスクラムやコーチングをするに至った経緯など、著者本人から直接お話しを聞くことで、より書籍に書かれた内容のコンテキストが入ってくる感覚がありました。
特に印象に残った言葉が「誰もが部分的に正しい」という部分で、いい言葉だなととても共感できました。
あと「好奇心も持つ」「遊び心を持つ」という部分も強調されていて、たしかにスクラムマスターとしてまずは自分が楽しむというのはとてもいいなと、思いました。
「面白き事もなき世を 面白く」という言葉の意味するところに近いのかなと。
今は面白くないわけでは全然ないですが、チームがいつもそう思えるように、自分自身も楽しむマインドを出して行きたいと思いました。